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たいせつな人に遺したいメモリーはありますか?

 2013-05-15
今回はヴァルーシアと同じくライアーソフトさんよりスチームパンクシリーズ5作目「紫影のソナーニル -What a beautiful memories-」の感想を。記事タイトルは、ALcotシトラスより「死神の接吻は別離の味」キャッチコピーである「たいせつな人に遺したいものはありますか?」。
ちなみに初めてこのブログを見てくださった方がいた時のために今後も毎回書いていくつもりですが、このシリーズは同じ世界観を共有していても作品として独立しております。ですので用語や小ネタなどを含む完璧な理解を試みないのであれば、どこから始めても構わないと思います。ヴァルーシアと書籍作品から入るのはあまりお勧めしませんが。全てを理解したいという方はセレナリアから発売順にやりましょう。それでも会報やファンブック限定の情報もありますが…。


世界観は今までと同じくカダスたる異邦との交流によって蒸気機関技術が異常発達し、空も海も灰色に染まった世界。舞台は1907年の西享(地球)、合衆国(このシリーズではアメリカと呼ばない)の「旧」重機関都市ニューヨーク
かつては世界最大級の都市として人々で賑わい排煙を撒き散らしていたニューヨークですが、1902年に「何か」があってその地にいた300万人全員が一夜にして消失する大事件が発生。政府の封鎖によって詳細不明となりながらも後に《大消失》と呼ばれるようになったその事件より5年後、《大消失》によって恋人を失った女性が未だ封鎖中のニューヨーク跡地に足を踏み入れるところから物語は始まります。彼女は歩き続けるのです。恋人と出会ったハイスクール時代の記憶を思い出しながら、ニューヨークに住んでいた人々の思いに触れながら。マンハッタンにあるトレヴァータワー、正式名称エンパイアステートビルⅡを目指して。

…そして同刻。リリィ・ザ・ストレンジャーは目覚めます。リリィという名前と、果てにある「紫影の塔」を目指さねばならないという目的の記憶のみを持って。
そこは地下。歪みながらも空があり、ニューヨークの町並みがあり、消失したはずの人々がいます。地上に存在しない、人々を襲って鉄に変える《御使い》なるものも。そして彼女は記憶の通りに果てを目指します。自分に従うと言う青年「A」と共に、1輌だけの地下鉄に乗って。それに意味があるのかすらわからないまま。


軽いあらすじのつもりが長く…。とりあえず人物紹介へ。
・「エリシア・ウェントワースCV.野月 まひる(現代)、桜川 未央(過去)
ライアーソフトHPへ!

主人公その1。地上の主人公。左目が黄金瞳。
自身の開発した多脚式歩行鞄「ジョン」と共に廃墟を歩く女性。恋人「アラン・エイクリィ」を《大消失》で亡くしており、彼の足跡を辿るために立ち入り禁止のニューヨーク跡地へ入り込む。
アランと出会った6年前は純粋で引っ込み思案な性格だったが、彼の死後は女としての人生を捨てるかのように勉強へ打ち込むようになった。地の優しい部分が変わっていないとはいえ、いかに彼の死が影響を及ぼしたかは想像に難くない。ちなみに過去の彼女は章が終わるときの過去話で見ることができます。とても可愛い。

・「アラン・エイクリィCV.????
エリシアの恋人。比較的親しい学友「セルヴァン」の先輩であり、6年ほど前に彼の紹介でエリシアの家庭教師となる。常に目が死んでいる。
名門と名高いイェール機関大学の学生であり、碩学(学者)。エリシアらと友好な関係を築くも、エジソン卿に引き抜かれてニューヨークへ移住。トレヴァータワーで彼の極秘実験に携わる事に。その後も電信通信で連絡を取り合うなど交流は続いていたが、《大消失》で死亡したものと思われる。

・「リリィ(リリィ・ザ・ストレンジャー)CV.かわしまりの
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主人公その2。地下の主人公。異形の地下世界を旅するストレンジャー。
ニューヨークの《地下世界》、アンダーグラウンド・ニューヨークで目覚めた少女。一章においては男装している。ずっと男装でもいいのに。
どこから来たのか、ここがどうなっているのかを始めとする記憶のほとんどが欠如している。覚えているのは「果てにある紫影の塔を目指さなければいけない」というもののみ。とはいえ日常生活に支障は無く、常識も身についている。
性格は小さな男の子のような意地っ張りが混ざった女の子。正体不明ながら自分に付きまとうAに対しては厳しく当たるものの、嫌ってはいない。
…わけあって、自分で服を脱げない。

・「ACV.古河 徹人
浅黒い肌に赫い目をした素性不明の青年。常に車掌服姿。リリィに付き従うと宣言し、1輌だけの地下鉄と共に彼女をサポートする。自身を人間ではないと称する。
何においてもリリィを優先し、身の回りの世話も(彼女に嫌がられながら)率先して行う。リリィの知らない知識を有するものの妙なところで常識に疎く、着替えの時に平然とリリィを脱がせようとしたり入浴時に体を洗ったりしようとする。日常生活だけでコント。彼曰く「リリィは自分にとって仔猫のようなものであり、仔猫に欲情する人間はいない」とのこと。


では全体的な感想を。
今回のソナーニルは女性主人公という事もあってか、だいぶ少女漫画(ほとんど読んだ事が無いのでイメージ)といいますか童話チックな作品だと思います。同じ女性主人公でもセレナリアやシャルノスとは違った毛色。地下の主人公はお姫様とその騎士のようなイメージであり、人々との触れ合いと襲ってくる怪物との戦い。地上では恋人を亡くした女性主人公ひとりが人々の遺した想いに触れつつ、自身の失った人の事を想いながら誰もいない廃墟を歩く。まあ、本質的にはそう違いがありませんけどね。表現の仕方と言いますかなんと言いますか…。
そして地上と地上がリンクしているんですよね。体験版をやってもらえればわかるのですが、リリィが出会った人たちが地上に遺してきた物にエリシアが触れるといった形です。これでニューヨークの人々が何かを大切にしていた事、しかしそんな彼らがもう地上に存在しない事が強調されています。副題である「What a beautiful memories」そのものです。
ああ、エリシアと言えばやはり一人旅は独白と心理描写の多い作風とよく合っていますね。たったひとりでも声が極端に少なくなるなんて常識は通じません。独白の多いこと多いこと。
そしてリリィとA。日常生活だけでコントです。主にAのせいで。知識はAの方があるのですが、どうにも常識に欠けていて。そんな彼に振り回されるリリィが可愛いです。けれども振り回されるだけでなく旅をしていくうちに確固とした自分など精神的な意味での強さを身につけていって…。
ついでにこのシリーズ全体のものとして、表に出る出ないは別として設定がすごいんです。作中はもちろんコラムのほんの一文、果てはファンアート企画のコメントまでが実は設定だったり。セレナリアの時点でザ・ガイドが設定集の面を持っていましたが、時間を重ねるごとにどんどん増えています。こうした設定を見るだけで色々と楽しめる私としては、なんとも素晴らしいものとなっています。願わくば、更なる設定収集と物語のためにも絶版状態のソナーニルノベルブックが再販されて欲しいのですが…。


そして毎度毎度ながら個人的に引っかかった部分を。
まずはシリーズ恒例の人を選ぶだろうとか各章限定のキャラがもったいないだの以下略。
次にシリーズとして見てるとですが、どうしても設定の似通ったインガノックと比べてしまう事。具体的には「繁栄から急に絶望の閉鎖空間へ」「そこに現れるまともな手段では手出しできない敵」などなど。あちらと違いソナーニルには記憶退行が伴うことによって「悲劇」としての要素が薄れていますけれど。私にとってインガノックが今のところシリーズで最高に素晴らしかったせいで(おかげで?)、どうしてもソナーニルがいくらか霞んでしまうような…。
あとは完全な主観であって好きな方には申し訳ないのですが、王族や貴族など…とにかくひたすら一人を(今回の場合は女主人を)持ち上げる系の話が苦手な人にはあまり合わないと思います。なんと言いますか、Aのリリィに対する姿勢がどうも男視点で見ると気障ったらしい部分があるのです。うまく説明できないのですが女性に受ける作品でよくあるようなものといいますか。こういうところがシリーズで一番女性に人気と言われる由縁なのでしょうか。とにかく非常に曖昧なものとなってしまいましたが、ええ。まあそのような。私の場合、普通のエロゲ等でも姫様や女貴族キャラがそれほど好きではない事もあるのでしょうね。ああ、とはいえ男尊女卑とかそういう意味ではなくそもそも普通のエロゲは女性から見ると…どうでもいいですね。はい。


なんだか最後にわけのわからない事になってしまいましたが、とにかく今回はここまで。色々書きましたが、今回も面白いと感じさせてくれる作品でした。ありがとうございます。
思えばこの作品の発表・発売は私が本格的にツイッターを始めてしばらく経った頃でしたか。壁紙やアイコンで見かけたのを覚えています。当時はほとんど知らなかったのでスルーしてしまいましたが。なんだか懐かしいです。それではまた。以下はネタバレを含む考察なんぞを。
紫影のソナーニル -What a beautiful memories-紫影のソナーニル -What a beautiful memories-
(2010/11/26)
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